閃光のように 第15話 |
クロヴィスはゼロの新衣装を取り出した! なんと、新しい衣装は布の面積が少なかった! そんな破廉恥な衣装は断固拒否! しかしそこでナナリーのお願い炸裂! あっさり骨抜きになったルルーシュはそそくさと着替えへ。 そして。 「ナナリー、見えるのか?本当に!?」 「ああ、見えます!お兄様、何てお美しい!!」 兄のアブナイ姿を見たい一心でギアスを打ち破り瞼を開いた超ブラコンナナリーは、頬を染めて歓喜の声を上げた。幼かった頃のルルーシュしか知らないナナリーは、美しくしいと皆が言うルルーシュを思い描いてはいたが、実物はそれに勝った。 女性が憧れるだろう透き通るような白さの滑らかな肌。烏の濡羽のような艶やかな黒髪。手足はすらっと長く、まるでモデルのようだ。 母親の血を色濃く残していてる中性的なその容姿に、嫌でも目が引きつけられる。 きっと私の瞼は今日この美しいお兄様を見るために閉じていたに違いない!ナナリーは兄の姿に感動しながらにっこりほほ笑んだ。 「お兄さま、良くお似合いです」 「そ・・・そうか?」 羞恥と歓喜に頬を染め、ナナリーの目が治った喜びで瞳を潤ませ、蕩けそうなほど甘い笑顔で見つめてくる兄に、ナナリーはうっとりとほほ笑んだ。 ああ、お兄様。 一生私の傍に居てくださいね。 「お兄さま、愛しています」 「俺も愛しているよ、ナナリー」 愛情溢れる甘い声で兄妹は囁きあった。 そんな様子をジリジリとした気持ちで見ているのは男ども。 なにせルルーシュはあのゼロマントをしっかり羽織っているため、その下の衣装を目にできるのは正面にいるナナリーだけなのだ。 皆の視界にはルルーシュの背中、つまりゼロマントしか見えない。 ここに戻ってきた時はしっかり身体を隠していたため、どうしてマントも短くないんだと、男2人はあのマントが邪魔だと睨みつけていた。 いわずもがなC.C.は着替えの手伝いをしたため見ているし、ナナリーの傍に控えている咲世子もさり気なくしっかりと堪能できる位置へじりじりと移動していた。 「お兄さま。ナナリーのお願いをもう一つだけ聞いてはくれませんか?」 「言ってごらん」 ナナリーの可愛らしいおねだりに、ルルーシュは美しく微笑んだ。 「お兄様の写真を取らせて下さい」 「・・・え?」 「お兄様のその美しいお姿を写したいのです」 真剣な表情で縋るようなナナリーの言葉を一瞬理解できず、ルルーシュは瞳を瞬かせた。この露出狂を疑うほど布面積の少ない、どこからどうみても女物を着たまさに変態な姿をどうしたいと? そこに割り込むのは当然C.C.。 「くくく。いいじゃないかルルーシュ。ナナリーは今まで目が見えなかったことで写真など自分で写したことなど無いのだろう?ぷくくく。こうして目が開き、目の前には最高の被写体。写真をとってみたいという好奇心が出るのは当然!お前も兄ならば愛する妹の願いに応えてやれ。くはははは」 笑いながら話す姿は大変腹立たしいが、内容は納得出来るものだった。 確かに皇族であった時は自らカメラを持つ機会などなかった。 きっと写真の話を聞く度に自分も何時か写してみたいと思っていたに違いない! ああナナリー。 なんてささやかな願いなんだ。 その願い、実現させるのが俺の役目!! 死ぬほど恥ずかしいがナナリーが願うのであれば、全力でモデルになろう!! あっさりとC.C.の言葉を信じたルルーシュは、早速咲世子に撮影場所を用意するよう命じた。 「問題はカメラだな」 カノンは最新のカメラを持っているが、借りるということはシュナイゼルに借りを作ることになる。ジェレミアも以下同文。とはいえ、このクラブハウスにカメラはない。 困ったな。 「ぷくくく、何を難しく考えているんだ?なにも問題ないだろう?ナナリーの携帯で写せばいい。それなら直ぐに待ち受けにも出来るだろう?」 何も本格的に写したいわけではないだろう。 それに、携帯なら持ち歩ける。 「なるほど。C.C.、お前は存外に頼りになるな」 「なに、礼ならばアレでいいぞ?」 「ふむ、いいだろう。あとでお前が満足するだけくれてやる」 アレ=ピザなのだが、このやりとりに男どもは即座に反応した。 「待ってルルーシュ!例のアレって何!?」 アレってアレのこと!? 満足するだけってどういうこと!? 君たち、そんな関係なの!? 「アレ・・・あれとはまさか・・・待ちなさいルルーシュ。そんな体を売るような真似はいけないよ、別の条件にしなさい」 可愛い可愛い弟がまさかそんな! 「そうだね。ルルーシュ、その役は他の者に任せなさい」 お前は私のものなのだからね。 彼女にはスザクを差し出せば問題はないよ。 そんな欲に溺れた2名+ブラコン1名の言葉は完全に聞き流したルルーシュは、いそいそとナナリーと共に咲世子の用意した撮影場所へ移動した。 携帯とはいえ機械。 そして開いたばかりのナナリーの目。 何かあったら困るからと、セシルも念のため連れて行く。 ルルーシュ、ナナリー、C.C.、咲世子、セシルが居なくなったことで、此処には男だけが残される形となった。 「まさか・・・そんな。僕のルルーシュがあんな女に!」 ルルーシュが!僕のルルーシュが!僕のなのに!!と、スザクは嫉妬に満ちた目で、ルルーシュたちが出て行った扉を睨みつけた。その体からはどす黒い嫉妬の炎が吹き出しており、この状態でランスロットに騎乗したらどんな数値になるのかな?興味深い状態だねとロイドは頭のなかで計算を始めた。 この面々の中に放置されたのだから、現実逃避をしたとも言える。 「待ちなさい枢木。僕の、とはどういうことかな?ルルーシュは私のものだよ?」 「何を言っているのですか殿下。ルルーシュと僕は幼い頃から恋仲なんです」 ルルーシュに愛情を注がれている自覚がありまくるスザクは、胸を張って言った。 「さて、そんな話初耳だが・・・大体あの子は生まれた時から私のものだよ」 「殿下が知らないのも無理はありません。僕達が知り合ってから今までの間、ルルーシュとナナリーは自分たちを死んだと偽っていたのですから」 聞く機会はなかったでしょうね。 産まれた時から?見捨てたくせによく言うよ。 ばちばちと火花を散らせ、嫉妬に狂った二人の男が睨み合う。 「兄上、枢木。一体何を言っているんですか?」 男が男と、という話は冗談で言っているものだと考えているブラコンクロヴィスは、二人のやりとりに困惑していた。そして、しっかりと意図に気づいたジェレミアは大量の脂汗を流し、カノンは楽しげに笑っていた。 さて、撮影会現場。 「ぷはははっ、違う、違うぞルルーシュ!もっとこう、腰をビシッとして視線をこう!」 笑いながら言うので馬鹿にされているとしか思えないのだが、C.C.曰く7年もの間視界を閉ざされた妹が、どんな格好のルルーシュを写したいか想像など出来るはずがないだろう。という理由で、C.C.に言われるままポージングを取っていた。 ナナリーは頬を染め、うっとりとした視線でルルーシュの姿を写しているので、C.C.の笑いは不快だが、言っていることに間違いはないのだと理解し、様々なポーズを取った。 もちろん全てナナリーに溢れんばかりの・・・いや溢れすぎる愛を注いだ全力のポーズと、慈愛に満ちた美しい微笑みを最高の位置で写せるのはナナリーだけ。 だから他の女性陣はカメラは持たず、後でナナリーからもらおうと心に決めていたし、眼福すぎる光景に、咲世子とセシルは言葉もなくうっとりと見入っていた。 「ああ、お美しい。お兄さま、視線をこちらに」 興奮したナナリーが、キラキラとした瞳で次々とルルーシュを写していく。 そんなナナリーに、C.C.は静止をかけた。 「ナナリー、そろそろいいだろう?くふふふ、ほらルルーシュ、ギアスを使え」 「な!?」 ここにいる全員にギアスは暴露済みだ。 イコールルルーシュが女性になることも全員知っている。 男の姿でこれを着るだけでも恥ずかしいのに、女になれと!? 女の姿を彼女たちに見られる羞恥から、ルルーシュの顔はみるみると赤く染まった。 ナナリーはもちろんその瞬間をあますところなく記録していく。 「くははは、ほら、はやくしろ」 「だ、だが!」 ルルーシュは真っ赤な顔でいやいやと首を振り、思わず後退った。 「お兄さま、是非お願いします!」 「任せろナナリー!」 先ほどまでの否定は何処へやら。 ナナリーに言われれば即答し、ギアスを発動させる。 その姿に、C.C.はもう限界だと腹を抱えて笑い出し、ナナリーはうっとりと舐め回すように兄の姿を見つめた。 「本当にお美しいですお兄様・・・いえ、お姉様!!」 「いやナナリー、お姉様はやめてくれ」 それだけは本当にごめん。 心が痛いから。 お願いだから、性別は関係なくお前の兄でいさせてくれ。 「分かりましたお兄様。では少し前に身体を屈めてください、そして・・・」 C.C.が笑い転げてしまったため、ナナリーは今までのC.C.の指示も踏まえて、C.C.以上にきわどいポーズの指示を出し、大喜びで撮影を続けた。 ナナリーがあんなに喜んでいる! ならばこの程度の恥は我慢してみせる! 全てはナナリーの幸せのため! 激しい羞恥に耐えながら頬を赤く染め、潤んだ瞳で見つめてくるものだから、女性陣の興奮も最高潮だった。 そんな撮影会が終わったのは3時間後。 際どいゼロ衣装を脱ぎ捨て私服に戻ったルルーシュは疲れきっていた。 ぐったりとソファーに身を沈めたルルーシュとは対照的に、ナナリーは携帯をいじり兄の妖艶な姿にうっとり顔だ。 「ナナリー、それをくれ」 「私にもお願いします」 「私にも」 「はい。ではこちらを転送しますね」 後ろから覗きこんでくる女性陣に、言われた画像を転送する。 彼女たちには絶対に誰にも見せず、誰にも渡さないことを条件にナナリーとの画像のやりとりを許可した。 「ナナリー。私にもルルーシュの写真をもらえないかな」 「お断りします、シュナイゼルお兄さま」 きっぱりいい笑顔でナナリーは即答した。 「・・・弟の写真が欲しいと思ってはいけないかな?」 「お兄様の写真で何をされるおつもりですか?」 躊躇うこと無くナナリーは即質問を返した。 耳年寄りなナナリーは、実はルルーシュよりこの手の話に強い。 私のお兄様の写真をどう使うのですか? まさかお兄さまを穢すつもりはないですよね? そう言いたげな瞳でどす黒いオーラをぶつけてくる。 ここで堂々と言った場合どうなるかは火を見るより明らかだ。 だからシュナイゼルはニッコリと兄の顔で言った。 「愛する弟と妹の写真が欲しいというのは、おかしな事なのかな?」 困ったような表情で言われては、ナナリーもそれ以上言うことは出来なかった。 ルルーシュ以外の人間は、絶対嘘だと解っているのだが。 「では、こちらの写真を・・・」 そう言いながらナナリーは一枚の写真をシュナイゼルの携帯に転送する。 そこにはすでに改造ゼロ服から私服に着替えたルルーシュが、ナナリーと共に幸せそうに微笑み合う姿が写っていた。 どうやら他の女性が写したものをナナリーがもらった物らしい。 シュナイゼルとしてはこれじゃなく、もっと色っぽくて、あの際どい衣装を着たものが欲しいのだが。 「私とお兄さまの写真です。お気に召しませんでしたか?」 弟と妹の写真が欲しいんですよね?と言われてしまえば引くしか無い。 今はルルーシュの視線の先にいるのが自分だと置き換えて我慢する。 「ナナリー。是非私にももらえないか?」 シュナイゼルが終わったと思ったら、クロヴィスまでそういってくる。 2番めの兄はわかりやすかったが、3番目の兄の意図がわからずナナリーは尋ねた。 「お兄様の写真を、どうされるつもりですか?」 この問にクロヴィスは満面の笑みで答える。 「それはもちろん、今後の衣装の参考にするに決まっているじゃないか。今回のものは私の記憶を頼りに作りはしたが、やはりちゃんとルルーシュの姿を見ながらイメージを纏めるほうがより良い物が作れるだろう!」 だから出来れば全身の写真を。 男、女、そして私服のものも欲しい! その瞳はキラキラと輝いていて、なるほど、さすが芸術家クロヴィス。 ルルーシュの姿に創作意欲をかきたてまくっているらしいと判断した。 二番目の兄と駄犬とは違い、その瞳も純粋なものだった。 「他の方には見せたり、渡したりしないでくださいね」 シュナイゼルお兄様にもですよ? 「わかった。誰にも渡さないと誓おう」 ナナリーはクロヴィスが求めていそうな写真を選び、全て送信した。 その写真にご満悦のクロヴィス。 「これはいい写真だ。有難うナナリー、君には写真家としての才能もあるようだね。ああ、ところでルルーシュ。ナナリーの写真も欲しいのだが」 「任せて下さい兄さん。ナナリーの写真でしたらいくらでも提供します!」 あと、その携帯貸してください。ハッキングできないようにしますから! 一瞬で立ち直ったルルーシュは、ナナリーにオーダーメイドの可愛いい服を!俺好みの服を!!と、目を輝かせた。 ナナリーとルルーシュにクロヴィスはマトモな兄として認識された瞬間だった。 スザクが僕も!僕も!とうるさかったので、ナナリーは「たまにはご褒美も必要ですよね」と、シュナイゼルに送った写真を転送した。 「ナナリー、これじゃなくて、エロいルルーシュ頂戴!」 当然ハリセンが3つその頭に振り下ろされた。 |